カフェテラス
喫茶店の外にあるカフェテラスが好きだ。店内の窮屈な中より、開放感のある外の空間で飲むほうが気分がいい。通りを歩く人たちを眺めながら、世間ウォッチャーをするような感覚が好きなんだと思う。テレビドラマや映画の中のワンシーンのような気分になれるのだろうか。
そんな体験をしたことが何回かある。ずっと以前に住んでいた九州の福岡で、十数年前に住んでいた中国の珠海で、そして、つい最近、何気なく訪れた渋谷や新宿の珈琲店で、コーヒーを飲みながら、通る人たちを眺めていた。そんな経験が少ない分、記憶にしっかりと留まっている。
その記憶の中の気分は、決して華やいだものではない。気分が滅入っている時とか、人間関係に疲れている時とか、何となくしっとりとした気分というか、ほとんどセンチメンタルな気分だ。記憶の中の自分はいつも一人でコーヒーを飲んでいる。
コロナ禍の中、カフェテラスでコーヒーを飲む人は増えていそうなのだが、この写真の店のカフェテラスには誰もいない。店内は満席のようだった。ここでコーヒーでも飲みながら少し休憩したい気分だったが、一緒に歩いていた母にはそんな趣味がないので、しかたなく写真だけ撮って素通りした。