秋は夕暮れ
今日も、いつもどおり、夕方近くなってから、老母と二人で散歩に出かけた。ただし、どこへ行くということを決めずに家を出た。昨日まで、散歩に出るときは、必ず、目的地を決めて出ていた。その際、トイレが近い母のため、トイレのある公園やコンビニを最低30分に一つは通るように考えて歩いていた。
ところが、最近は、すぐに、「トイレに行きたい」と言い出す。すると、今いる地点から最も近いトイレのある公園かコンビニを地図で探して、歩くことになる。そうすると、予定していたコースを外れる。しかも、用を足した後で、「足が痛い」というので、そこからの最短コースで家に帰ることになる。
そんなわけで、昨日は、方向さえ決めずに家を出た。分かれ道があれば、母の言うとおりの道を選んで歩いた。知らない道を歩くこともあった。ただし、歩く距離、トイレの場所は常に頭に入れていた。そうこうして、ほぼ2キロほど歩いたところで、家に帰る最短の道をグーグル地図で確認して帰途に就いた。
ほぼ一時間半のおかしな散歩だったが、道端にきれいな花を見付けたり、「この道を行くと、ここに出るんだ」という発見もあったりで、それなりにおもしろいものだった。日が暮れるころ、ちょっとした高台から夕焼けが見えた。「秋は夕暮れ」という『枕草子』の言葉をふと思い出した。