日々是好日 - Seize the Day

煩悩だらけで無力で、罪深い人間の戯言です。

地面の底の病気の顔

 今年の秋は夏のように暑い日と冬のように寒い日とが交互にやってくる。奇妙な秋だ。関東地方で夏日を記録したところがある一方、明日は北海道で雪が降るかも知れないという。
 それでも季節は明らかに進行し、日光などではモミジが美しく紅葉しているらしい。我が家の前の街路樹、モミジバフウが真っ赤に染まっていて、路上には紅葉や黄葉が重なりあって積もっている。
 ところで、1886年11月1日、朔日(さくじつ、ついたち)生まれの長男ということで、朔太郎と名付けられた詩人萩原朔太郎は口語自由詩、象徴詩の完成者だと言われている。
 高校生の時、国語の先生から、紹介された彼の詩はひどく難解なものだった。だが、先生からは意味を理解するより感じることが大切だと教えられたような気がする。彼の詩はことばだけでなく、象徴するものにもリズムがある。
 彼のことは2年前にも3年前にも記事にした。2年前には「竹」を記事にしたが、今年はもう一つ強く印象に残った詩、「地面の底の病気の顔」を少し懐かしく思い出しながら、ここに記したい。



地面の底の病気の顔


地面の底に顔があらはれ、
さみしい病人の顔があらはれ。


地面の底のくらやみに、
うらうら草の茎が萌えそめ、
鼠の巣が萌えそめ、
巣にこんがらかつてゐる、
かずしれぬ髪の毛がふるえ出し、
冬至のころの、
さびしい病気の地面から、
ほそい青竹の根が生えそめ、
生えそめ、
それがじつにあはれふかくみえ、
けぶれるごとくに視え、
じつに、じつに、あはれふかげに視え。


地面の底のくらやみに、
さみしい病人の顔があらはれ。


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