春望
同居している母以外、誰とも会わない引きこもり生活もほぼ2ヶ月近くになる。
この間、親友のことを思ったり、遠くにいる親族、それに、すぐ近くにいる兄弟のことを思う。
そればかりではない。なかなか会えない人たちのことを思いながら、敢えて連絡はしていない。
そんな中、友人や家族から「どうしてる?大丈夫か?」と連絡が来る。
そんな時、ふと、頭に浮かんだのが杜甫の「春望」だ。
国破山河在 城春草木深
感時花濺涙 恨別鳥驚心
烽火連三月 家書抵万金
白頭掻更短 渾欲不勝簪
国破れて山河在り、城春にして草木深し。
時に感じては花にも涙を濺ぎ、別れを恨みては鳥にも心を驚かす。
烽火三月に連なり、家書万金に抵る。
白頭掻けば更に短く、渾べて簪に勝えざらんと欲す
戦乱で都は破壊されたが、山や河はそのままだ。町は春を迎え、草木が色濃く生い茂っている。
今の時代のことを思うと、咲く花にも涙を流し、人との別れを哀しく思うと、鳥の声にも心が傷む。
戦いの烽火は三か月もの間続き、
たまに来る家族からの連絡は万金にも相当する。
心労で白髪になった頭を掻けばさらに薄くなり、冠を止めるための簪もさすことができそうにない。
<杜 甫(712年 - 770年)は、中国盛唐の詩人>
遠くにいる友達や家族、それに、近くにいながら会えない家族から、電話なり、LINEなり、何がしかの連絡があると、それが万金に当たるというほどにうれしい。自分から連絡すればいいのだけれど、ぼくはただ、じっと閉じ籠っている。