自利利他
好きな言葉にはいくつかあるが、何年経過しても、いつまでも、心に残る座右の銘といえることばは「日々是好日」、「吾唯知足」、そして、今年5月23日にもブログにアップした「自利利他」だ。
森鴎外の「我をして九州の富人たらしめば」を読んで、知ったことばだ。大乗仏教の考え方で「自利」と「利他」をともに行う。自らの利益を追求するだけで、他人に利益を与えようとする「利他」の精神がなければ、本当の幸せは得られない。
夫れ藝術学問の物たる、その嗜好の上より言へば、皆嗜好者の自利の所為に属す。然れども自利の最も高きものは利他と契合すること、譬へば環の端なきが如し。藝術の守護と学問の助長とは、近くは同世の士民を利し、遠くは方来の裔孫を益す。富人の当に為すべき所のもの、何物かこれに若くべき。スタインが昨年の著なる社会問題に云へることあり。汝一事を行はゞ、必ずその事の啻に汝の生活を肯定するのみならず、亦他人の生活を肯定し、就中《なかんづく》後昆の生活を保護し増盛することを期せよと。富に処する法も、亦実にこの数語に尽きたり。設《も》し或は人ありて、わが言《こと》到底人の耳に逆ふことを免れずといはゞ、敢て謝す敢て謝す。(森鴎外「我をして九州の富人たらしめば」)
調べてみれば、稲盛和夫の「成功の要諦」にも出てくる。経営者の理念として必ず必要なものだ。
利己、己を利するために、利益を追求することから離れて、利他、他人をよくしてあげようという優しい思いやりをベースに経営していきますと、会社は本当によくなります。「そんな博愛主義みたいな甘っちょろいことで経営ができるか」とおっしゃるかもしれませんが、経営の極意というのは間違いなく利他にあるのです。
今の世界、自分および自分の組織や自分の国を第一にする指導者が多い。そんな時勢において、「自利利他」はキーワードになると思う。また、ブログの精神の根底にあるべきものでもあると思う。そこで、今日からブログタイトルを「自利利他」に変更しようと思う。