日々是好日 - Seize the Day

煩悩だらけで無力で、罪深い人間の戯言です。

月見草!


 コンクリートの隙間から顔を出した月見草。この花を見ると、「富士には月見草がよく似合う」という「富岳百景」(太宰治)の一節を思い出す。


 今住んでいる町では、6月になると、この月見草の花がいっぱい見られるようになる。小高い里山に向かう途中の道ばたで、これでもかというほどに咲く。我が家からは富士山の頭がほんの少し見えるが、果たして、この花が富士山に似合うのかどうかと考え込んでしまう。


 かつて、大分に住んでいたことがあって、豊後富士と言われる由布岳を望みながら、道ばたに月見草を見付けた時のことを思い出す。「分け入っても分け入っても青い山」(山頭火)というのがぴったりするような、大分の連なる山の中で、群を抜いて美しかった豊後富士を見ながら、儚げな薄いピンク色のこの花を見つけたときの、何とも言えない感動が思い出される。


 あの頃は確かに「富士には月見草がよく似合う」と感じていたのだが、今住んでいる町で、駐車場の脇に咲き誇る姿にはあまり感動がない。コンクリートの隙間から顔を出した姿には、たくましさしか感じない。まもなく、初夏がまた巡ってきて、いっぱいに咲くのだろうとしか感じないのは感受性が鈍化している証しなのだろうか。

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