日々是好日 - Seize the Day

煩悩だらけで無力で、罪深い人間の戯言です。

秋の歌5首

河風の涼しくもあるか打ち寄する浪とともにや秋は立つらむ<古今秋上・紀貫之>
(川の風が涼しいことだ。風が吹いて打ち寄せる波とともに秋は立つのだろうか!)
 しばらく前には夏の暑さにうんざりしていた。それが少し涼しくなって、同時に立秋が来た。


木の間より漏りくる月の影見れば心づくしの秋は来にけり<古今秋上・よみ人しらず>
(木の間から漏れてくる月の光を見ると、また心を悩ませ物思いにふけさせる秋がきたのだなあと感じられる!)
 立秋から少し過ぎると、次第に秋の深まりを感じるようになってきた。そんな時、森の中を散歩すると、確かにそうだ。木の間から漏れてくる月の光にいよいよ寂しい秋がきたのだなと思う。




月見れば千々にものこそ悲しけれわが身一つの秋にはあらねど<古今秋上・大江千里>
(月を見ると、あれこれと悲しく感じられるなあ。私一人だけの秋ではないけれど!)
 秋は深まり、あれこれ悲しく感じられる季節になった。私一人だけの秋じゃないが本当にしみじみといろいろなことが感じられて、時折感傷的な気分になる。



吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風をあらしといふらむ<古今秋下・文屋康秀>
(風が吹くとすぐに秋の草木もしおれてしまう。なるほどね、草木を荒らしていいる山の風を嵐というのだろう!)
 窓の外を見ても、黄葉や紅葉が路上に散っている。それを見れば山から吹いてくる風が草木を荒らして、あらしと呼び、嵐と書くのだろう。


秋風にあへず散りぬるもみぢ葉のゆくへ定めぬわれぞ悲しき<古今秋下・よみ人しらず>
(秋風に耐えられずに散っていくモミジの葉の行方はわからない、同じく行く末の定まらないわが身が悲しいことだ)
 もみじ葉の散りゆく様子はまさに老境にある身にはひどく悲しい。散りゆく先はどこか、老後はどうなるのか、不安が募る。


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