モジズリ
捩花(ネジバナ)。モジズリ、ネジガネソウとも。ラン科、ネジバナ属。時計回りに捩れて咲く小さくて美しいラン科の花で、5~8月に咲く。そのネジバナが住宅の近くの原っぱで、ずいぶんと見られるようになった。この花、万葉集にも詠まれたという。
百人一首にも採用されたが、万葉集の第四句「乱れむと思ふ」が、百人一首では「乱れそめにし」となっている。このほうが「染め」と「初め」と掛けられていておもしろいし、歌の意味も理解しやすい。
陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに(百人一首)
陸奥の信夫(しのぶ)に生えるシノブグサで染めた「もじずり」の乱れ模様のように、心が乱れ初めてしまった。これは誰のせいでしょうか。わたしのせいでもないのに。(あなたのせいだと暗に示す)
百人一首はかつて、全部覚えたつもりだ。今はあちこち欠けているが、ふと、このネジバナの別名「モジズリ」と聞いて、頭に浮かんだのがこの一首だ。かつて、覚えたのは百人一首カルタ大会のためだった。ただし、機械的に「みち」と聞けば、「みたれそ」の札が取れるように、丸暗記しただけだった。
今は、この「もじずり」というのが気になっている。調べてみれば、これは、捩(もじ)れた模様に染められた絹織物の一種だそうだ。この花のらせん状に捩れた花序がその模様に似ていることから、「もじずり」とつけられたという。今、気になっているのは、この「もじずり」という絹織物の模様がどんなものなのか見たことがない。一度見てみたいものだと思う。