おいちゃん
久しぶりに会った甥から、「おいちゃん」と呼ばれて、ふと思い出した。
これは方言なんだ。関東地方に住んで、日本語を教えていて、忘れていたことばだ。ぼく自身も小さい頃、叔父のことを「おいちゃん」と呼んでいたのを思い出す。それに、「おいちゃんは~」と自分を指して、言ったこともある。
「じ」が「い」になるのは、つまり、「Ojichan」の「j」が脱落したということだ。他にそういう例はあるのか考えてみた。だが、「じ」が「い」になる例はなかなか見つからない。
しかし、子音が脱落して、「い」になる例を探すとまず、イ音便がある。「書きて」が「書いて」に、「泳ぎて」が「泳いで」になるものだ。
そういえば、中国人名の「李(Li)」が、韓国では、みな「李(i)」になってしまうという子音脱落の例もある。
ウ音便も子音脱落の例だ。「おおきく」が「おおきう」、「うつくしく」が「うつくしう」になる。と言っても、これは西の方だけで、関東地方ではない。こちらは古語から続いている言語現象だ。
ところで「おいちゃん」ということばを使うのはは福岡だけだろうか。関西は「おっちゃん」だと聞いたことがある。また、映画の寅さんはたしか「おいちゃん」を使っていたように思う。さて、どういう方言分布になるのだろうか。