雲よ!
今日の空、雲の名前は知らないけど、ふわふわとした雲を見ていると、子どもの頃のことを思い出す。
高校生のころ、団地に住んでいたが、団地の裏の小山に登り、団地を見下ろすと、いくつもの棟がマッチ箱に見えた。
ぼくはその中の小さな箱の中のマッチにすぎない。そう思った時、ふと、芥川龍之介のことばが蘇る。
「人生は一箱のマッチ箱に似ている。重大に扱うのはばかばかしい。しかし重大に扱わなければ危険である」
それから、小山の上の草原に寝っ転がって、空を見ると、漂う雲が流れている。それを見ていると、また、山村暮鳥の詩句が思い浮かぶ。
「おうい雲よ馬鹿にのんきさうぢやないか」(山村暮鳥)
のんきに流れている雲に比べて、当時のぼくは人生を急ぎすぎていたように思う。劣等感や、いろいろな挫折の中で、自己嫌悪を何度も味わっていた。
のんびりと雲を眺めていて、わけもなく涙を流したものだ。