もう一人の自分!
ぼくは普段、「ぼく」という一人称を使う。
仕事中は「わたし」を使う。
「おれ」を使うのは親友と話す時だけだと思っていた。
だが、もう一人の自分がいて、
そいつはいつだって「おれ」を使うそうだ。
出会ったことがないので、よく知らない。
泥酔した翌朝、前の晩の記憶が全くないが、
人によれば、そいつは自分を「おれ」と呼び、
人を馬鹿呼ばわりするらしい。
人は「ぼく」を極悪人のように非難する。
ぼくはそいつを恐れて泥酔を避けているが、
最近のこと、泥酔していなくても、
突然、激しい怒りとともに鬼のような
もう一人の「おれ」が現れた。
思い出すだけでも恐ろしい。