「だに」
ムラゴンの皿々さんのブログで、三重県の方言に、言葉尻に「~に」を付ける言い方があるというのを見て、ふと、八木重吉の詩の一節を思い出した。
大学生の時、ぼくはどちらかというと、団体行動が苦手な性格だった。そんな中、一人の友人ができたのだが、彼はさらに徹底して集団を嫌う性格だった。二人で話しているところに、ぼくの友人が近づいてくると、さっとどこかへ離れていくのだ。
彼の下宿に行けば、彼はいつも一人ぼっちでギターを弾いたりしていた。よく、二人で食事を作って食べたり、詩の話をしたりしていた。
そんな彼の部屋の出入り口にかかっていたのが、八木重吉の詩だった。
こころよ
では いっておいで
しかし
また もどっておいでね
やっぱり
ここが いいのだに
こころよ
では 行っておいで
ひどく素朴だが、何か心にひびくものがある。彼はこの詩を眺めながら、部屋のドアを開けて、出かけていたのだろう。
そして、この「やっぱり ここが いいのだに」という言葉、どこの言葉だか知らないが、「いいのだ」の後に「に」がついている。そこがまたいいと思ったのを覚えている。方言は標準語と違って血が通っているような気がするからだろうか。
皿々さんのことばによると、三重県のある地域では「行こうよ」が「いこい」になるという。だったら、この「いいのだに」は「いいのだね」だろうかと思った。
ただ、八木重吉の出身は現在の東京都町田市だ。どういうつながりがあるのだろうかと考えた。八木重吉は東京師範学校(現横浜国立大学)を卒業し、兵庫県の御影師範学校(現神戸大学)と千葉県東葛飾中学校(現東葛飾高等学校)で、英語教師をしている。三重県とはつながらない。
「~だに」という方言について、ネットで調べてみた結果、長野県、静岡県、群馬県、三重県などで使う人がいるらしいということまでわかった。だが、それ以上については今のところ分からない。どなたかわかる人がいらっしゃったら、お教え願いたい。