日本語のニュアンス
日本語を教えていて、「ますか?」と「ませんか?」の違いは何かという質問が出た。何かの本で読んだのだが、部下がみんなで飲みに行く話をしていて、そこへ部長が入ってきた時、部下の一人が「部長も行きますか?」と言ったら、部長が機嫌を悪くしたという。「部長も行きませんか?」ならいいのだが、「行きますか?」では、「行かなきゃいいのに!」という気持ちが含まれている、あるいは「言ってほしい」という気持ちが含まれていないという。
これは言われてみれば、そうかと思ったものの、言うときの口調によるのではないかとも思った。明るい口調なら、「来てほしい」だし、暗い口調なら、「来てほしくない」の意味になる。口調だけではなく、動きを加えることで意味が変わる日本語というのもある。「いいです」という時、首を横に振りながら言えば、「要りません」だし、首を縦に振りながら笑顔で言えば、「よい」の意味になる。また「けっこうです」もそうだ。口調や動作によって、「要りません」となったり、「それでいいですよ」となったりする。
ふと思い出したのが、数年前のサラリーマン川柳「課長いる部下の返事はいりません」だ。「いる」も「います」「要ります」の意味がある。「犬いる」の答えは「要らない」「居ない」と答えるか考えたら悩ましい。「奥さんいる」など独身者に聞いたら、どう答えるか「ほしい」というか、「いない」と答えるべきか。既婚者だったら、「ああいる」と答えるか、または、「もういるから要らない」と答えるべきか。