日々是好日 - Seize the Day

煩悩だらけで無力で、罪深い人間の戯言です。

セミ


 河辺の並木道を歩いていたら、セミの声がすぐ近くから聞こえて来たので、耳を澄まして、音のするあたりをじっと見つめた。だが、セミの姿はなかなか見えない。


 青空の下、ギラギラとした日差しが木々の葉を輝かせている。その木々の交錯する枝に、数え切れないほどのセミが確かに存在していて、ミーンミーン、ジージーと鳴き続けているのだが、ふと、木々はセミの発生源にすぎないのであって、セミの実体は存在しないのかもしれないと思うほど、その姿が見えない。


 セミの体は木々の色と同化しているらしく、目の前で鳴いていても、多くの場合、姿は見えない。それでも、歩きながら、またセミの声が身近に聞こえると、立ち止まり、じっと見つめる。


 そうして、ようやく見付けたセミ。明るい葉陰に身を潜めているセミ。だが、そのセミは雌のようだ。じっと止まっているだけで、鳴いていなかった。雌のセミは鳴かないらしい。鳴いている雄のセミを見付けるのはなかなか難しい。


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