日々是好日 - Seize the Day

煩悩だらけで無力で、罪深い人間の戯言です。

独歩と溝口!

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国木田独歩の文学碑
 江戸時代、江戸から二子、溝口を通って、西の大山までお参りする道があって、これを大山街道というが、この図書館もこの街道沿いにある。明治の作家国木田独歩が書いた小説「忘れえぬ人々」の冒頭に、この高津区の大山街道の様子が描写されている。


「多摩川の二子の渡しをわたって少しばかり行くと溝口という宿場がある。その中ほどに亀屋という旅人宿(はたごや)がある。ちょうど三月初めのころのことであった、この日は大空かき曇り北風強く吹いて、さなきだにさびしいこの町が一段と物さびしい陰鬱なさむそうな光景を呈していた。昨日降った雪がまだ残っていて高低定まらぬ茅屋根の南の軒先からは雨滴が風に吹かれて舞うて落ちている。草鞋の足痕にたまった泥水にすら寒そうな漣(さざなみ)が立っている。日が暮れると間もなく大概の店は戸を閉めてしまった。闇(くら)い一筋町がひっそりとしてしまった。旅人宿だけに亀屋の店の障子には燈火(あかり)が明(あか)く射していたが、今宵は客もあまりないと見えて内もひっそりとして、おりおり雁頸(がんくび)の太そうな煙管で火鉢の縁をたたく音がするばかりである。


図書館前の銅像


図書館


図書館の入り口

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