五月、小満、サツキ!
我が家の近く、五月を彩るサツキが今盛りだ。出かける度に、あたり一面に咲き乱れる奥深い色合いの赤い色に圧倒される。母はこれを見る度に、ツツジがいっぱい咲いていると言うが、四月に咲いていたツツジを見ると、もうすでに枯れ落ちている。
「これはサツキだよ」とぼくは話しているが、サツキは単に五月(皐月、サツキ)に咲くツツジということで、「サツキツツジ」と言うらしいので、「ツツジだ!」という母も、間違ってはいない。
さて、21日は旧暦四月十日、二十四節気の小満だ。万物が成長する陽気で満ちるころだとそうだ。だが、この日ごろ、雨続きで、期待するような五月はなかなか訪れない。そう言えば、萩原朔太郎の詩に「五月の貴公子」というのがあるが、イメージされる五月はすでに通り過ぎてしまったかのように思われる。
若草の上をあるいてゐるとき、
わたしの靴は白い足あとをのこしてゆく、
ほそいすてつきの銀が草でみがかれ、
まるめてぬいだ手ぶくろが宙でおどつて居る、
ああすつぱりといつさいの憂愁をなげだして、
わたしは柔和の羊になりたい、
しつとりとした貴女のくびに手をかけて、
あたらしいあやめおしろいのにほひをかいで居たい、
若くさの上をあるいてゐるとき、
わたしは五月の貴公子である。
(萩原朔太郎『月に吠える』「五月の貴公子」)
爽やかなはずの五月なのに、梅雨入りしそうな天気が続いて、その上、コロナの緊急事態宣言がさらに延長されそうだという。ますます鬱陶しい限りだが、同時に、明るい話題であるオリンピックも近づいている。オリンピック開催となれば、緊急事態宣言は解除されるだろうが、それでも、感染者数がなかなか減らない東京で、IOCは本気で開催するつもりなのだろうか。天気だけでなく、何もかもが奇妙なことになりそうな2021年だ。