連なる山々!
毎日、部屋の窓から見える山々を見ながら思うこと、それは、若山牧水の短歌「幾山川」や、上田敏の訳詩「山のあなた」だ。
幾山川越えさりゆかばさびしさのはてなむ国ぞ今日も旅ゆく(若山牧水)
(現代語訳)
どれだけの山と川を越えていけば、寂しさの尽きる国があるというのだろうか。そんな思いで、今日も生きている)
山のあなたの 空遠く
「幸」住むと 人のいふ
噫われ人と留めゆきて
涙さしぐみ かへりきぬ
山のあなたの なほ遠く
「幸」住むと 人のいふ(カール・ブッセ / 上田敏訳)
(現代語訳)
山のずっと向こうに「幸せの国」があると人が言う。尋ねてみたが、見つからず、涙ぐんで帰ってきた。あの山のかなたのもっと遠くに、「幸せの国」があると人が言う。
窓の向こうの連なる山々。夕暮れには夕日に照らされ、折り重なる、いろいろな思い出がよみがえる。
山々の向こうには、懐かしい山梨県がある。もっともっと西に行けば、さらに懐かしい故郷があり、海を渡れば、中国がある。
山や川や海をいくつ越えたところで、さびしさの尽きることはなかった。それに、幸いの住む国などあるはずもない。
連なる山々を眺めながらいつも思う。今あるところで小さな幸せを求めるよりほかはない。それ以外に今望むことはない。