幾山河!
自然はいつも通り春から夏へと移行しはじめている。
桜が散って、ツツジが咲いて、鶯が美しい声を聴かせてくれて、近くの木の枝ではカラスが巣を作り始める。
ほとんど、何も変わらないように見えるけど、世界は大変な崖っぷちだ。
ぼく自身は3月から時計の針が止まったかのような生活を続けている。そんな時、ふと思い出すのは若山牧水の歌だ。
幾山河
越えさりゆかば
寂しさの
はてなむ国ぞ
今日も旅ゆく
世界のウイルス感染者が200万人を越えた。死者も13万人以上になった。コロナウィルが終息するのはいつになるのだろうか。
都会からは人が消え、繁華街からはネオンが消えている。人々は、家を出ず、会いたい人とも会わず、孤独の中で、ひたすら耐え続けている。
感染を防ぐために死者を悼むこともできない。
いったい、いつになったら、この寂しさ、悲しさは終わるのだろうか。
夕暮れ時の重なり合う西方の山を眺めながら、ふと、終わりのない旅を思ってしまう。