日々是好日 - Seize the Day

煩悩だらけで無力で、罪深い人間の戯言です。

ヘッドホン

 テレビで、九州の沖ノ島と宗像の神社など8点が世界遺産に決まったというニュースをやっていた。国際会議場で、スピーチする人、拍手する人たちの映像が流れていた。めでたいことだ。福岡の人たちにはおめでとうと言いたい。

 ところが、この時、いっしょに見ていた母が、奇妙なことを話し始めた。ついさっき買い物に行ってきた時の話だ。「団地のエレベーターに乗ったら、男の人が中にいたから、同じ団地の人だと思って、『こんにちは!』って挨拶したんだけど、相手の男性から何の返事もなかったの。その人、今、テレビに出てきた会議の人たちが頭に着けているのと同じものをしていたの。あれ、名前、何ていうの?」

 ヘッドホン(ヘッドフォン)だと答えたら、さらに聞いてきた。「あれをつけていたら、外の音は何も聞こえないの?」どうやら、これが聞きたかったのだ。そして、さらに聞いてきた。「会議の人たち、何であんなものをしているの?」あれは通訳を聞くため。エレベーターの人はたぶん音楽を聴くためと説明しながら、母は何も知らないんだと、いや知っていたかもしれないが、忘れているんだ。

 それは仕方ないとして、エレベーターの人は失礼だ。挨拶もしない。電車やバスの中でもそうだが、ヘッドホンをして自分の世界に引きこもっているだろう。まわりで何が起きているかを知ろうとも考えようとも、見まわそうともしない。時には音漏れして、周りに迷惑をかけていることもある。そんなの関係ないのか。

 ヘッドホンをして道を歩く、自転車を運転する、いろいろな人がいるが、これは危ない。例えば、車の走る音、クラクション、自転車のチャリンという音など、道路上では重要な情報は耳から入ることが多い。それだけではない。もし視覚障碍者が歩いていても、カチカチというあの音など全く聞こえないだろう。困っている人がいても関係ない、重要なのは音楽か何かを聞いている自分だけだ。

 もっとひどいのがいる。かつて、学校へ勉強に来てるはずの学生が、何と授業中にヘッドホンあるいはイヤホンをしていたという話を聞いたことがあった。それが、最近、自分も実際に目にしてしまった。何をしに来た。音楽聞くなら家で聞け!と怒鳴りながら、自分の授業がおもしろくないんだろう!と反省もした。近い将来、イヤホンとスマホがなければ生きていけないなどという人が出てくるかもしれない。

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