両忘
生死、貧富、善悪、愛憎、貧富など、世の中には対立することばがいっぱいある。
貧しいのは嫌いだ、金持がいい。この人は好きだが、あいつは嫌いだとか。この人はきれいだが、あいつは醜いとか。その結果、生きることをつらく思うこともある。この仕事、あの人としたくないとか。喜びと悲しみとを同時に感じることもある。
だが、考えてみれば、そういうプラスとマイナスは知らぬ間にしまっているだけ。実は違うのかもしれない。例えば、わたしはある一面で嫌われているかもしれない、ある一面で好かれているかもしれない。だが、わたしの本質は変わらない。それなのに、それを全部、嫌いとか好きとか言われてもどうにもできない。ということだ。
「両忘」
実は、その時、この言葉に出会った。そして、どちらか一方に決めてはいけないのではないかと思った。そもそも私の見ているのは一面に過ぎないのではないか。考えてみれば、その人には素晴らしい面があるのではないか。そう考えるようになった。そう、その人の本質を見るべきだと思ったのだ。
本当にいい言葉だ。どっちか一方に決めてしまうのは人間の愚かさだ。どっちか一方であってほしいというのが人間の愚かさだ。勧善懲悪の思想がどこかにある。ブラックかホワイトか決めたいのだ。だが、実質はそうではない。そのものの持っている本質を見れば、白黒決めることはできないのだ。好き嫌いでは片づけられないのだと気づかされた。どちらか一つに決めることを忘れなければならないのだ。
「両忘」
言葉との出会いはいい。一つの成長を促されたような気がした。