日々是好日 - Seize the Day

煩悩だらけで無力で、罪深い人間の戯言です。

秋刀魚!

 秋と言えば秋刀魚、秋刀魚と言えば、「目黒の秋刀魚」!


 小さいころ、魚の骨がのどに刺さり、救急車で運ばれて以来、魚が嫌いになった。大学を出るまで、ほとんど魚を食べたことがなかった。刺身も寿司も食べることはなく、もちろん回らない寿司屋なんて入ったことがなかった。


 教員になり、港のある街に赴任し、住んでいたアパートの大家さんと仲良くなった。大家さんはスナックの店もやっていて、そこで、彼が魚を食べさせようとするが、ぼくは魚は嫌いだと断固、断り続けた。その大家さんが、ぼくをいい店を紹介すると言って、カウンターのある日本料理店に連れて行った。そこの女将さんが料理した魚、あれは焼き秋刀魚だったような気がするが、それをとにかく食べてみろと言われて食べてみた。おいしかった。大家さんに「美人が料理すると食べるんだね!」とからかわれたのを今も覚えている。


 大家さんにはずいぶんお世話になった。その後、寿司屋にも連れられて行った。回転しない寿司屋はその時が初めてだった。そこで、マグロの刺身や寿司を食べさせられて、齋見と寿司のおいしさを知った。ただ、その後も寿司屋の敷居は高かった。回る寿司屋ができるまで、寿司屋の暖簾をくぐることはなかった。


 そんなぼくが、数年前、日本語教師として中国へ行った。そこで、毎日のように学生たちといっしょに屋台のような店で酒を飲んだ。酒のつまみには日本円にしたら、60円ぐらいの焼いた秋刀魚だ。おいしかった。秋刀魚のおいしさを知ったのはこの時だ。道端の露店の店、目の前で焼いてくれる秋刀魚、毎日とは言わないが、その店に行けば、かならず秋刀魚を注文した。


 その後、中国の日本料理店に行く機会があって、秋刀魚を注文した。値段は日本円にしたら、400円ぐらいだった。だが、何故かおいしくない。これはどこの秋刀魚だろうなどと思いながら、ふと20代のころ夢中になって聞いていた落語の「目黒の秋刀魚」を思い出した。
 
 帰国後、何度か焼さんまを思い出して、店で買ってみたり、仲間と店に行き、秋刀魚を注文してみたりしたが、やはりおいしくない。中国の露店で食べたあの安価な秋刀魚の味が忘れられない。やはり、秋刀魚は中国の露店に限ると今も思っている。

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